湖南市サイコー

【後編】2019年夏。出会いからfm craicの事業承継、そして未来へ。

2020年12月31日

fm craic創業者の三峰 教代さん、佐々木 由珠さん、そして今回、事業承継を決め、新たに代表に就任される釘田和加子さんの対談インタビューをお届けします。

後編では、佐々木さんと釘田さんの出会いから、事業承継に至るまでの経緯、弥平とうがらしへの思いや、これからの目標まで、思う存分語りあってもらいました。

前編はこちら>【前編】元OL2人が「弥平とうがらし」を栽培・商品化。fm craic創業ストーリー

【釘田さん(写真右):プロフィール】
中学時代からインドに興味を抱き、大学を休学しインドへ。卒業後は貿易会社勤務を経て、京都のNPOにて年間の半分をラオスにて勤務。JICAインド事務所NGOデスクにてコーディネーター業務を担当。

退職後、帰国し正社員として働いた後、よりローカルな分野に関わりたいと地域おこし協力隊として湖南市へ。

見出し

偶然がもたらした、釘田さんとfm craicとの出会い

湖南市_ビリヤニ
―― 佐々木さんと釘田さんの出会いは、佐々木さんが配達に行った先に、たまたま釘田さんがいらっしゃった。こちらもまた偶然の出会いですね。

  • あと、私は妊娠中の気分転換にと、釘田さんが開講しているヒンディー語教室に参加したこともあります。SNSに投稿されていたビリヤニも見ましたね。

    とうがらしに興味がある、スパイスが好き、インド好き。面白い人やなと直感的に思いました。ダメもとで、相談を持ちかけようと連絡したら、ちょうどその日にビリヤニを作っていて(笑)。

  • そうそう(笑)。JR甲西駅前の今プラスで、ビリヤニを食べながら話をしましたね。

  • そのとき話した内容は、事業のこと、産休中や出産後の手伝いのこと。こんなことを唐突に言うのはどうなんやろ、との気持ちもありました。ちょっと不安というか、大丈夫かなと。

  • もし断られたら、みたいな。

  • そうそう。まず、いきなりそんなこと言われたらびっくりするやんなって思いましたね。でも、ほんと、快諾してくれはって。「いいっすよ」みたいな感じで。マジか! って。こっちが驚くという。

  • まず面白そうだなと。私も地域おこし協力隊として湖南市に来ているので、結構フリーな部分も大きくて。なんでもやってみたいなという気持ちで。あと、最初は、まだ会社を継ぎましょうという話ではなくて…(笑)。

  • そうなんですよ。当時は、私も滋賀でずっと暮らす前提で、産休中や出産後に手伝ってもらえたら助かりますっていうノリ。

―― そして、2019年秋から釘田さんがお手伝いを開始されたんですね。そして12月に、佐々木さんの旦那さまの職場異動が決定し、お手伝いではなく、代表として担う話が浮上したと。

  • はい。12月くらいに「やりたいならやってくれてもいいし、やめてもいいし。どっちでもいいよ」と言われたんです。私としては、これまでコーディネートする立場で、現場を知らないこともあって、すごく興味がありました。

    ただ、1人で背負ってやれるのか不安です。でも、やりたいです、と言いながら、多分、半年くらいはっきりとした答えはできなかったと思います。

  • 私の出産が、3月末。事業を継ぐかどうかは別にして、配達なども全て釘田さんにお願いしていました。やりとりは、LINEです。三峰さんを含めて3人で初めて会ったのは、出産直前ですね。

釘田さんの第一印象は「変わった人」。※いい意味で。

――同い年の釘田さんの第一印象は。

  • よく、こういう人見つけてきはったな、と。滋賀県で、同年代で、インドとか海外とか、変わったことが好きな女性。かつ、1人でどうにかしたいと思っている野心的な人。

    なかなか出会わないので、ほんと、よくこういう人を見つけはったなぁって。多分、ふつうの女の人なら、難しいことだと思います。

  • うん。いわゆるふつうの女子やったら、多分、こんな重いものを任されて「やります」とは言わないでしょう。

  • そこを「やる」っていうような人やから、よっぽど変わっているなと思っていたけど(笑)。いい意味でね。

  • 感覚的なところも、共通している部分がありましたね。

  • そうそう。で、まあ「あかんかってもやってみたらええやん」って。面白がりながらチャレンジできる人って珍しいなと思って。

  • そういうのもあって、なんかいけるって私は勝手に思ってましたね。でも、ほんと、私からすれば、地獄に仏ですよ。これからどうしようって思っていたときですから。

  • よういてくれたなぁ。いや、ほんまに。

  • よかった。

  • それで、そんなすぐに深刻な話を進めたわけじゃないけど、とりあえずちょっとやっていきましょう、というスタートでしたね。

  • で、私はもう、佐々木さんの意向に任せます、と。佐々木さんが続けるんやったらできる限りでは助けますという話だけはしていました。主体的には動けないけれど、できる方法に対して協力はします、と。

  • 継続か、辞めるか。釘田さんが、もしかして一緒にやってくれるかも、ということも全て話していましたね。

―― ライフステージによる変化はあっても、進む方向性に全くブレがない印象です。畑、事務所、いろいろな場所で、お互いのことをたくさん話してきたからこそ、つくることができた関係性がありますね。

  • はい。だからこそ、家族のこと、考えていることもわかるようになりましたね。だからって、何か言えるわけじゃないですけど。ただ、一番は、三峰さんの幸せを第一に考えてくださいということ。

  • ライフステージに伴う変化は、30歳の私たちには見えていなかった未来。結婚や出産、家族の変化などは、あまり想像していなかったので。

  • そうそう。やっぱり30歳から40歳の10年って結構変化が大きいですよ。変わっていかなあかん部分と、それなりにやっていかなあかん部分と。

  • だから悩んだことは悩んだよね。30代後半は、お互いにね。自分の人生も、弥平とうがらしもこれからどうしていくんやろう、みたいな。でも、今はお互い納得のいく、いいかたちになっていますよ。

―― そして2020年6月には、釘田さんが事業を承継することを決めたと。

  • NCLのアドバイザーの牧さんに相談したり、滋賀県事業引継ぎ支援センターに相談したり。最初は、一人でやることの心細さもありましたが、やってみようと決めて、2人に承諾の返事をしました。

  • それを聞いて「ああ、弥平残るんや。よかった」って思いましたね。私も、辞めてもいいと言いながらも、お客さんに言うのは申し訳ないとか、お世話になった人たちに辞めますとは言いにくいとか悩んでいたので。本当によかったなって。

これからのfm craicについて


―― 新しいfm craicに期待することを教えてください。

  • これまでは私と佐々木さんのコミュニティを活用して、営業しながら広めてきました。でも、釘田さんは、また全く違うコミュニティを持っている方。

    だから、全然違う世界に広がったらいいなと。これからどうなって欲しいというよりも、ただ、面白そうだなって。

  • 私も、そうですね。あと、私自身も弥平とうがらしのファンなので、これからも購入できること、食べられることがすごく嬉しい。あとは、釘田さんのインド的なエッセンスとかもぜひ取り入れてもらえたら。

  • そうそう、新しい目線から広げてほしい。弥平とうがらしを入れたビリヤニを売ってるかもしれへんしな。

  • あ、そうですね!

  • そうそう。本当に楽しみ。あと「釘田さんの好きにして」って思っています。

  • 最初からほんまにそう言ってもらっていて。すごくありがたい。

  • それは釘田さんと私たちのベースが、あまりに違う感じじゃないからやと思う。例えば、全然趣味が合わない人だと不安にもなると思うんですね。でも、センスとか生きてきた時代がなんとなく似ているから、安心感がある。なんかダサいことをするとか、そういうことはしはらへんやろうと(笑)。

  • そう。あと、嫌なことが共感できるって大きいのちゃうかなと思っていて。好きなものが一緒というよりは、モラルとかお客さんに対する礼儀とかの感覚が似通っているから、安心して任せられる。

  • むしろめちゃめちゃ丁寧。うちらよりちゃんとやってくれはる。

  • そうそう。もう本当に、安心して託せます。

  • ありがとうございます!

弥平とうがらしは、地域の宝物。fm craicにとって、運命の野菜。


――弥平とうがらしに対する、今の思いを教えてください。

  • まず、存在自体が地域にとって、すごく貴重。宝物。美味しいのは当たり前。でも、そもそも存在が埋もれていたこと自体、びっくりしていますね。何で今まで誰も取り上げなかったのか、と。

    だから、私たちにとって運命の野菜。本当に、出会えてよかった。弥平じゃなかったら、fm craicは継続できていないと思います。弥平とうがらしあっての私たち。

  • 結構いろんな人から「ありがとう」って言われましたね。市外の人に自慢できる商品ができたと。

    嫁いできた人から「帰省するたびに持って帰っている」と言われたり、「うちの地元には、こんなステキなものがあると言えるものを作ってくれてありがとう」「お土産ができて嬉しいわ」と言われたり。

――現在の主な取り扱い場所は、湖南市の「ここぴあ」、甲賀市のJA直販所「花野果市」、菩提寺パーキングエリアや甲南パーキングエリア。東京の滋賀県アンテナショップ「ここ滋賀」。

  • もともとは、湖南市外では売らないぐらいの気持ちでした。ここに買いに来てほしい。だってどこに行っても同じお土産が売っていたら、面白くないでしょう。

  • なるほど。

  • でも、これから釘田さんが販売する上では、自由に戦略を考えてくれたらいいと思っています。その辺りもひっくるめて、好きにしてほしい。

―― ラインナップの中で、一番のお気に入りは?

  • 一番のお気に入りは、「ホットチリソース」ですね。「柚子ぴりり」もかなり使いますけど。でも、ホットがほんまに美味しくて。

    ついこの前も、3、4年前ぐらいに日本に来たアメリカ人が、美味しかったからと「アメリカまで送ってくれ」と言われて、送ったんですよ。

  • 代替えがないのでね。これじゃないと!っていう、唯一無二の味です。

  • これだけはつくり続けてもらわんと。

  • 絶対つくります。

  • つくり方自体はもちろん知っています。でも、もうつくらへんから。つくってほしい。

  • 買いたい。

  • 買いたい。これだけは買い続ける。

  • (笑)。ホットチリソースは、熟成してきたらさらに美味しいんですよ。

  • 美味しい、そうそう。

  • 時間を置くことで、また味が変わってより美味しくなるんですよ。大量に持っていても、どんどん美味しくなるので。

  • 賞味期限ぎりぎりになるのを待つっていう、ほんまに。一番美味しいのは、1年経ったあととかやな。そこからどんどん美味しくなる。

    最高どこまで美味しくなるのかは、知らないですね。3年目ぐらいまでは、試したことがあるんですけど。

  • なんか黒っぽくなる。

  • 中がちょっとね。風味がどうなんやろうって感じやけど。でも美味しいねん。うまみしかない。辛味の向こうのうまみに出会う味。

  • 私は、今のところ「柚子ぴりり」をヘビーユースしていますね。

  • ほんまそう。柚子も絶対必要や。買いたい。毎年買う。釘田さんもそうやってファンになってくれはってね、よかったわ。

  • うん。いや、ほんまに美味しいし、楽しいです。

  • 弥平とうがらしを入れたビリヤニも、めちゃくちゃ美味しかった。

  • ビリヤニセットとかね、売ってほしいわ、ほんま。

滋賀県湖南市_チキンビリヤニセット

  • そうなんです。個人的にビリヤニセットというのを手づくりしていて。弥平も一緒にミックスして。

  • 絶対うまみがね、違うよね。ビリヤニもこれから来るやろうね。

  • 来ると思う。ナシゴレンとかブームが来たので、次はビリヤニが。

  • そうそう。2020年は、京都にビリヤニ専門店ができたので。

  • あ、できたんや。ほんならもうブームは来始めてんねや。

  • もうね、ちょっとずつ来ていますよ。

  • 美味しいもんなぁ。

事業継承を決めた今。そして、今後への思い。

  • まず、会社を残すために、お2人がこだわりを捨てて、好きにしていいよと言って渡してくれた経緯があるので。これから自分がどうしていくというよりは、何よりもつないでいくことが大事だと思っています。受け継いだものを、ちゃんと育てていきたいなと。

  • でもこの先、辞めるも辞めへんも、もう自分次第やし。もし、難しくなったら他の人にパスしたって面白いし。

  • そうそう。いい意味で。気負わず。

  • パスしやすくしておくというのもいいよね。1回目は、かなりハードルも高いけれど、2回目以降は、もうちょっと軽めにパスするみたいな。

  • そうしたほうが残りやすいよね。

  • そう。何よりも「弥平とうがらしを地域に残し続けたい」っていうのがあるので。

  • なんせ、うちらの共通は「残しておいてな」なので。買いたいし。

  • せっかく10年かけて開発して、お客さんもついて。これまで、お2人がつないで来られたものですから、なくしたくないとの思いがあります。なので、しっかり収益も上げて、会社残していくように頑張りたいなと。

  • もうね「収益上げて」という部分に私、めちゃめちゃ感動して。

  • いや、そこが重たいんですけどね。

  • でも会社としては、重要なところ。生活していけるように、それなりの対価を得られるように。

  • まあでも、自分が倒れてしまったらあかんから、楽しめる範囲で。

  • そうそう、しんどくならへんようにというか。

  • それが一番。

  • やっぱり嫌ってなったら、また緊急会議しよう。ほんならどうしようか、って話し合おう。

  • いつでも相談ができるので、私も気楽に。

  • でもまた1周回ったら、私もやるって言うかも。

  • やるって。それはあり得るよな。

  • それ、アリなので。

  • 落ち着いたら、関東支部として、何かできないかとか考えたいですね。「ここ滋賀」用アイテムとか。

  • もっと東京で営業してもらわなあかんようになるかも。先のことは、分からへんやんね。でも、私も、弥平とうがらしの栽培には関わりたいので。

  • 全ての関係がバツって切れるわけじゃないので。関わりしろは、これからも色々。

  • そうそう。で、今の気分は「離れる」やけど。

  • ちょっと1回卒業させてもらって。

  • もしかしたら5年、10年したら帰ってくる可能性もあるので。

  • そうそう。あんまりまわりをうろちょろするのも、ちょっとやりにくいかなとかも思うので、「1回卒業します」って言っているんですけど、何かあったら。隙あらば(笑)。

  • 隙あらば(笑)。

  • またうろちょろするので(笑)

―― 仲の良さが伝わってきます(笑)。最後に釘田さん、事業継承1年目の現状と目標をお願いします。

  • 2020年から弥平とうがらしの生産を、全量外部委託に切り替えています。ただ、農産物の生産量は毎年安定しているわけではありません。

    在庫量は、多すぎても少なすぎても会社の収益に影響します。在庫管理と販売のバランスをとることが、一番の課題です。

  • あと、在庫量が少ないときに少量の弥平でつくれる新しいアイテム。スイートチリソースに次ぐ商品開発も。

  • そうですね。インドと絡めつつ。面白い商品を開発したいですね。。

  • でも私も、収穫量が少ない年はパートに出たこともあったので。もうないもんは諦めて。今年はあかんわ、って。

  • ないものはないのでね。休んで、他の仕事でお金を稼いで生き延びて。「売り切れました」「大人気のため」とか、ちょっといい感じで言うておいて(笑)。

  • 潔く諦めて(笑)。まずは、今、生産してくださっている方々に感謝しつつ、生産量、在庫、販売の良いバランスを見つけていきたいです。

    あとは、旧・石部フラワーの一角を借りて、加工場兼事務所にしようと話を進めている最中です。場所もDIYするので、いろいろな人たちを面白く巻き込んでいきたいなと。工事は、2021年、年明け開始。春にはオープン予定です。


『これからもfm craic、そして弥平とうがらしをよろしくお願いします!』

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